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2003.10.31

自分に適用されない方法論?

子安宣邦さんの『日本近代思想批判―一国知の成立―』(岩波現代文庫)は、1996年に同氏が書かれた『近代知のアルケオロジー』の増補版です。

cover

同書は、戦前の知識人から戦後思想までを論じていて、小熊英二『〈民主〉と〈愛国〉―戦後日本のナショナリズムと公共性』と相補的に読むのによいかもしれません。僕の守備範囲でいえば、「Ⅱ他者への視線 第一章 近代知と中国認識-「支那」学の成立をめぐって-」あたりは特に気になります。
しかし、ぱらぱらと読んだかぎりでは、問題あるようです。

例えば「Ⅳ歴史表象と記憶 第一章 〈隠蔽〉と〈告発〉の間-戦争の記憶と戦後意識-」では歴史教科書問題、「南京大虐殺」は実際にあったかどうかをめぐる議論を行い、そこで日本側の大虐殺はなかったという主張に潜む問題を明らかにしていますが、そこで終わってしまっていることで、左翼的党派性をもって議論しているに過ぎないという印象を与えてしまいます。方法論にこだわって、知識人の知の権力行使を問題にするのであれば、返す刀で中国側の誇大広告戦略をもぶった切るべきでしょう。双方に潜む問題を明らかにしなければ、結果として政治的な議論として機能してしまうというのに、著者自身が自身の立場を特権的に保護してしまっているのか、それとも学術的な議論よりも政治的な立場の方が大切なのか、そこをないがしろにしています。

このあたり、小熊さんも同じ問題を抱えているようです。現代思想をやっている人間はサヨク、みたいなレッテル貼りに抗せないような立ち位置をとるのは、実際のところがどうであれ、学問としても脇が甘いということになるのではないでしょうか。

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