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2005.08.08

『宇宙戦争』は滅びの美学

ヒルズで見てきました。SW3とどっちか悩んで、とりあえずこっちから。月曜夜だからか夏休み突入だからか、相変わらずすいてました。金曜夜とか1日とかでないと混んでないように思えます。1,800円、やっぱり高いよね。50歳以上カップルとか、高校生3人以上とか限定しないで、1,000円で統一した方がもっと見る人が増えると思うんですが。

それはさておき、スピルバーグの『宇宙戦争』ですが、えらく怖い映画でした。いっしょに見た相方はこれまでになく怖がってました。子供が劇場で見たらトラウマになるんじゃないかしらん。でも殺人光線はこれまで見た光線の描写の中でも最高のかっこよさだったし、木の葉のように舞い散る衣服は幻想的な美しさがありました。怖いのに、でも美しい。トラウマ倍増ですね。

すごいなと思うのは、悪趣味なくらい映像、音楽、演出、すべての匠の技を総動員して理不尽な暴力を見せておきながら、ディズニーでも行けそうな大衆娯楽映画の基準も満たしてるとこです。明示的な死体、流血を見せてないし、主人公は美男美女(幼女だけど)ですしね。トム・クルーズが港湾労働者の情けないオヤジにしちゃかっこよすぎるという批判もあるようですが、大人目線では「親バカ」偏差がかかるからトムのかっこよさだけを不自然に思うだけで、それを言ったら、ダコタ・ファニングみたいなかわいい娘もそうはいないでしょう。美男美女が手を取り合って苦難に立ち向かうから思い入れもできるわけで、子供が見たらトムみたいな「かっこいい」お父さんがああまでして守ってくれるのにはしびれちゃうんじゃないかと。地下室のトムのあの決断のシーンは凄みがありました。あそこが一番のクライマックスでした。トライポッドやっつけちゃうのはおまけでしかないです。自動車オタクの軟派な優男がよくがんばった。あれ、労働者然としてたりオヤジ然としてたりした俳優だったら、感情移入できないくらい不快になったかもしれません。僕がもしその状況におかれたら、と想定できる範囲の居心地の悪さに止まったのはトムのルックスのおかげだと思います。

あとパンフレットには、本来階級差があったのに、トムのルックスに上流階級の元奥さんがヤられていったんは結ばれたみたいなことが書いてありました。なるほど。最後、トムは父性回復は成し遂げたものの、結局はまた独りになる感じでした。上流階級は平然と上から見下ろすなあ。せめて元奥さんの金持ちの親の住まいも破壊されたり、灰かぶりになってれば、そしてむしろそうなってる方がリアルだろうに、そうなってないあたり、むしろファンタジーとしてトムを阻害しちゃってるわけですよね。しかしそうした描写は、大虐殺、大破壊が起こったところで、ほんの一部の例外をのぞけば、虐げられし弱き者はそれまでと同様生きていくしかない、しかしそうと諦観しつつも、終末の到来に一縷の望みをかける、その繰り返しをおこなってきた歴史の真実を示しています。それに、むくわれない主人公もまた大衆娯楽の王道パターンの一つといえるので、やはり最後まで娯楽作品として計算され尽くしてると思ったのでした。がんばれトム、と応援しちゃいましたよ。

おもしろくてためになった『宇宙戦争』評:
eigadojo.com
伊藤計劃:第弐位相
大蟻食の生活と意見
m@stervision

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