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2005.09.29

忍者愛皆無の2005年度ワースト1

SHINOBI』を見てきました。台北で見かけたポスターは日本と同じ絵柄でありながらも、恋愛的要素よりも「山田風太郎原作の忍者活劇」とか「特殊効果でアクション満載」みたいな宣伝文句(うろ覚え)が踊っており、ひょっとして、とすがるように見に行ったものの、『RED SHADOW 赤影』に次ぐ酷さで、文句なしに今年度ワースト1決定でした。
原作やそれのすばらしいビジュアル化の漫画版とは、比べるまでもないのでここでは触れません。というか触れる気すらおこりません。いいんですよ、原作無視したって。それが時代ものとして楽しめるなら。アクションものとして楽しめるなら。恋愛ものとして楽しめるなら。どれ一つとってもダメダメでした。もう映画の酷さだけでおなかいっぱいだったのですよ。

まず時代ものとしてダメダメ。山奥の隠れ里をつぶすのに大砲引きずっていくありえなさもさるころながら、砲撃されるまでまったく気づかない忍者の無能さぶり。あのー、権力側の忍者の頭領ではコントロールできないほどのその異能ぶりを恐れられて、権力者につぶされるという設定でしたよね? たかが5人ばかしいなくなったとたんに簡単につぶされるような連中のどこが脅威なんでしょう? そして最初からだまして皆殺しにするつもりだったのに小娘一人の両目ごときでなぜ助命など? 嘆願にやってきたところでそっこーだまし討ちでしょどう考えても。それに停戦の命令があっという間に駿府から伊賀の奥地まで届いたのはどうやったんでしょうね? こうした基本的な説明が何一つできていないくせに、大砲で隠れ里を攻めるのは大量虐殺兵器の比喩です、とかパンフレットでのたまっていた監督は実に頭が悪いと思います。第一、冒頭で一般兵卒をなぎ倒していた忍者たちの方がよっぽど大量虐殺兵器だと思うんですが。

次にアクションものとしてダメダメ。主人公が大活躍してこそのアクションなのにもかかわらず、いちばん燃えた(というか、まともな)アクションはいちばん最初の夜叉丸×筑摩小四郎だという時点で、明かな失敗作と言えるでしょう。もとより朧はその能力からしてアクションはだめ、となると甲賀弦之介ががんばらにゃあかんのですよ。そうだよ仮面ライダークウガ、君だよ。エキセントリックなチンピラ演技してる場合じゃないって。なのに、彼が一番活躍したのは最大の敵薬師寺天膳との戦いではなく、その後の雑魚の忍者をまとめてぶったぎったところ数分だけ、でした。えー。ありえません。活劇として全体に山がなく、個々の戦いにおいてすらもりあがりにかけるありさま。情けなや。脚本家はテレビの時代劇、ちゃんと見たことないんでしょうな。ちゃんと見るというのは理解するということですよ?

では売りの恋愛ものとしてはどうかというと、これまたダメダメ。主人公同士にはキスシーンすらなし。お色気担当の黒谷おねーさまにも濡れ場なし。えー。これまたありえません。愛を語るのは科白でのみ。それならラジオドラマでええよ。画で見せてくれなきゃダメでしょうに。これもまったく盛り上がりませんでした。ロミオとジュリエットのように引き裂かれるためには両者がぐっと愛し合ってくれてないといかんというのに、それがほとんど感じれなかったのが残念です。この監督、『関於愛(アバウトラブ)』の東京編を担当してるそうで。一気に見る気が失せました。

さて、こうもダメダメな原因はいくつもあるでしょうが、その病根の一つには間違いなく作り手の忍者愛の欠如がありますね。例えば、その術を知られたら死も同然みたいな基本セオリーを理解してないから、平気で朧の術を権力者側が知っていたりするような演出ができるんですよね。異能の力の描写にしたって、ハリウッドや香港武侠片の借り物程度の想像力。脚本やら演出やらの人たちはいったい白土三平や横山光輝を読んだことがあるんでしょうか。想像力がないのは許そう。しかしその分は偉大な先人をリスペクト(≒引用)することでいくらでもカバーできるではないの。ネットでこざかしいバックグラウンドストーリーを公開して悦に入ってるようじゃダメですねえ。

【追記】:09/30
現代の企業スパイに置き換えた設定」でリメイクだそうな。そんな話が来る時点でダメダメだよ。でもよほどましな映画になりそうな気もするのが悲しいです。

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コメント

ああ〜そうなんだ〜。いや、いいところ集めるはずの予告編のダメダメさから、想像はしてたんですけどね。野村さんのご意見を尊重して、観にゆくの止めにします。『チョコレート工場』『七剣』はゆきます。諸星の『黄泉』と『仮面ライダー』に期待。

投稿: ほうじょう | 2005.10.02 04:29

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