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2005.10.09

日本中国学会第57回大会二日目

学会二日目。朝、クラーク博士の胸像を写真にとってから、会場へ向かいました。
DVC00013
午前の研究発表では、松村せんせいの「「碑学」のメタファー」が興味深かったです。阮元-康有爲-魯迅を取り上げ、碑文研究とは現状の文献研究をより「オリジナル」なものの研究を通じて乗り越えることを目指すもので、それはナショナルな政治運動のメタファーなのだというものでした。質疑では京都産業大学の小林せんせい(このお方か?)が、「すべての碑文研究が政治的メタファーなんですか?」というコメントをされました。つまり学術的興味があるから碑文研究をしたのであって、政治的な信条からそういった研究をしたわけではないだろう、という批判かと思いました。これに対して、東大の藤井せんせいが「伝統を資源に政治的主張をする行為は当時よく見られた」と助け船を。「伝統の創造」というやつで、政治改革・国家改造を喧伝するにあたって、自らの主張が中国古来の伝統思想にもとづくものだ、とする主張は当時の知識人がよく使う手でした。というか、より古きを持ち出すことで現行の正統とは別の権威を打ち立てようとするこうした語り方自体は洋の東西今昔を問わず見られます。例えばマルクス主義歴史学と日本の考古学のマッチングなんてのもそうなのかなあ。小林せんせいの視点は非常に重要なのですが、じゃあ魯迅を論じる際には彼の政治性は問題にしないのかというと全然そうではなくて、彼の文学は芸術であると同時に政治だったのは前提なわけで、じゃあ小説家はアリで学者はナシってどういう基準?ということになるでしょう。学術研究と政治を両立させてしまえるのもまた自明のこと(それが望ましいかどうかはともかく)なので、学問と政治についてもっと論じられてもいいのではと思います。この角度はそのまま現在の日本の学界状況まで引っ張ってこれるでしょうし。
あと発表自体は途中から少し聞いただけですが、中尾せんせいの「梁漱溟の憲政論」の質疑で、中尾せんせいが「中国の現代農村を梁漱溟の思想で変えるんだ」みたいな趣旨の発言をされ、ダメな中国人に中国文化の神髄を教えてやるのだ的発想がまだ生き残ってるのかと思いました。まあでも欧米の文化人類学者がインフォーマント側に入れ込んで政治運動をしちゃうみたいなもんで、それって知識人の癖なんでしょうか。昔はこんなん不純や~と泣いてたもんですが、最近はこうした傾向自体を研究史としてきちんと位置づけねばという気になってきました。中国学研究でなく中国学者研究といったところでしょうか。今僕たちが行っている中国学研究が先人達の営為の後を継いで行われているのであれば、朱子や江戸の漢学者の言動を研究をすることと、現代の中国学者の言動を研究することとの間に、はたして決定的な差があるのでしょうか。1万年後の研究者から見れば、さして違わないはずですし。

午後のシンポジウムは、「北の都の〈幻灯事件〉――図像・映像による中国探索」と題した、ビジュアルイメージを論じる「受け」狙いの発表、というよりも興行、でした。会場けっこうバカ受け。凝ったパワポのプレゼンやら映画のワンシーンを切り取って見せてやら、文章でその楽しさは伝えづらく、是非ともflashアニメで公開してほしいです。
「革命映画」や「雷峰」が取り上げられたことについてでしょうか、「新しさを狙っているワリに、逆にレトロを感じ」た方もいたようです。確かにネタとしては二階堂さんや千田さんから5年以上前に聞かされていたもので、今さら、という意識もあって当然かと思いますが、むしろネタとして楽しんでいたものを堂々と天下の日本中国学会でやってのけたところを高く評価しなくてはいかんのでは、と思います。マスタークラスの域に達しつつある人に、仲間を背中から撃つようなことをしてほしくないんですが。
しかし確かに、位置付けがやや中途半端な感があるにはありました。楽しいプレゼンで通すなら一般公開までを企画してもっと仕込んで欲しかったですし(そのこと自体が学界のあり方を問うことになるでしょう)、現状の研究動向への異議申し立てをするならもうすこし哲学研究や文学研究など主流のディシプリンとの接続について論じて欲しかったです(実際、十分に既存の文献研究と連続性を認めうると思いましたし)。

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